【初心者向け】チャットボットで抑えるべきポイント|メリット・AIの有無・事例
『チャットボットってうちでも使えるかな?』
もし会社で尋ねられたら、パッと説明することができるでしょうか。
「チャットボット元年」と呼ばれる2016年より勢いを増し続け、2021年現在では誰もが一度は使ったことがあるほど定着しているチャットボット(Chatbot)。
この記事では、チャットボットの概要や注目される背景といった基礎知識から、導入メリットやAI(機会学習)の有無、国内の最新事例まで網羅的にご紹介します。
今後導入を検討する際に、根拠をもって判断できるようチャットボットについて学んでいきましょう。
チャットボット(Chatbot)とは?
チャットボット(Chatbot)とは、「Chat(会話)」と「bot(ロボット)」を掛け合わせた言葉で、自動会話プログラムのことを言います。
ロボットと言っても、SF映画などに登場する人型のロボットではなく、「自動で作業を行うプログラム」のことです。
具体的には、コンピューターが人間に代わって会話するというもので、お客様がメッセージを入力したり、いくつかの選択肢から回答を選んだりすることで、ロボットとコミュニケーションをとることができます。
チャットボットの歴史
チャットボットの歴史は意外と古く、1966年に誕生した「ELIZA(イライザ)」が世界初となるチャットボットと言われています。
当時のチャットボットは音声による会話に対応しておらず、決められたパターンで受け答えをする程度のものでした。
しかし、1996年頃から自然言語検索に対応した「Ask.com」という検索エンジンや、Microsoft Office97におけるチャットボットを利用した「Officeアシスタント」などが誕生し、チャットボットは黎明(れいめい)期に突入します。
ExcelやWordの画面上に現れるイルカのヘルプキャラクターを覚えていることも多いのではないでしょうか。
その後、NTTドコモが携帯電話向けのユーザーエージェント「iコンシェル」を提供したのをきっかけに、チャットボットを利用したサービスが次々と誕生しました。
そして2016年、従来よりもさらに実用化されたチャットボットがFacebook MessengerやLINE、Skypeなどのメッセンジャーアプリに導入され、チャットボットの飛躍期が始まったのです。
チャットボット年表
1966年 | 世界初となるチャットボット「ELIZA」が誕生 |
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1968年 | 対話型人工知能が登場する映画「2001年宇宙の旅」が公開 |
1996年 | 対話型ヘルプ機能「Office アシスタント」が誕生 |
2008年 | NTTドコモが「iコンシェル」の提供を開始 |
2011年 | 自然言語によるやりとりが可能な「Watson」がクイズ番組で勝利 |
2012年 | NTTドコモが音声エージェント機能「しゃべってコンシェル」の提供を開始 |
2014年 | Amazonがスマートスピーカー「Echo」、バーチャルアシスタント「Alexa」 を発表 |
2016年 | Facebook Messenger、LINE、Skypeなどにチャットボット機能が追加される |
2017年 | 横浜市がチャットボットを利用したゴミ分別案内の実証実験を開始 |
2018年~ | チャットボットが必須インフラとなるか |
なぜ注目されているのか?
2021年に入ってもチャットボット市場の勢いは衰えることなく、継続して注目されています。
「Google Trends」というキーワードの検索回数を確認できるツールでチャットボットを検索してみると、2016年から徐々に注目され始めて、年々右肩上がりで盛り上がりをみせていることが分かります。
では、一体なぜこのように人々の注目を集めているのでしょうか。
働き方改革への取り組み
いよいよ2019年4月から働き方改革関連法が順次施行されました。
中でも、3本柱の1つとして「長時間労働の是正」が掲げられています。
いわゆる残業時間を削減するためには、業務量を減らすか、生産性を向上させる必要があります。
しかし、業務量の削減は現実的ではなく、企業はいかに業務効率を上げるかを考えていかなければなりません。
そこで、いままでヒトが行っていた業務をITツールの活用で削減するような、ITによる働き方改革の推進が注目を浴び始めたのです。
チャットボットも生産性の向上に大きく貢献できるツールであり、導入により成果をあげた企業もゾクゾク増えてきているので、年々トレンドが増している状況です。
消費者と企業のコミュニケーションの変化
消費者と企業がコミュニケーションをとる手法として、依然として「電話」「メール」といった従来のチャネルが数多く利用されています。
しかし、トランスコスモスの調査によると、2018年度に「チャット」というチャネルは、利用経験者が全体の20%近くまで急増しており、コミュケーションの新しい手段として浸透してきていることが分かります。
――なぜ20%の利用経験率で浸透しているといえるのか?
新商品や新サービスを市場に浸透させるとき、初期市場からメインストリーム市場への移行には大きな溝があり、キャズムと呼ばれています。
メインストリーム市場でブレイクするにはキャズムを超える必要があるとされていて、超えなければ市場から消え、超えれば爆発的に浸透していくとされています。
16%を境にキャズムが生まれるとされており、「チャット」については利用経験率が20%近くあるため、キャズムを超えて今後急激に市場に浸透していくと考えられるからです。
チャットボット導入のメリット
では一体、チャットボットを導入することで、どのようなメリットを得られるのでしょうか。
「企業にとってのメリット」、「実際にチャットボットを使う利用者にとってのメリット」の視点でそれぞれ見ていきましょう。
企業にとってのメリット
社内/社外の問い合わせ対応業務の効率化
問い合わせ件数の削減を目的にFAQやマニュアルを作成しても、なかなか利用されずに問い合わせ対応がラクにならないというケースもあるでしょう。
チャットボットは、利用者がよく使うページに設置することができるのでとにかく目立ちます。
そのため、利用される機会が多く、「よくある質問」に自動回答してくれるので、ユーザーの自己解決を促し、担当者が直接対応する問い合わせ件数を削減できます。
結果、空いたリソースを他の業務にあてるなど、業務の効率化を実現できます。
人件費の削減・労働スタッフの確保
年中無休サポートを実施している場合、夜間は割増の人件費がかかるだけでなく、人員の確保にも手を焼いていることでしょう。
チャットボットは24時間365日休まずに対応することができるため、サポートの一部をチャットボットが肩代わりすることで、時間当たりのスタッフ数を抑えて人件費を削減することが可能です。
また、チャットボットは同時に複数名の問い合わせ対応を行うことができるので、人員の確保が難しい場面でも、大きな戦力として活躍を期待できます。
WebサイトのCVR改善
Webサイトで訪問者の離脱が多く、なかなかコンバージョンにつながらないというお悩みをお持ちの方は多いでしょう。
チャットボットは、自動で訪問者に話しかけを行うことができるので、顧客との接点を増やすことが可能です。
また、疑問が生じたとき、今まではFAQページを確認するか問い合わせをしていたものを、画面を遷移せずにチャット上で気軽に即時解決できるようになります。
結果、訪問者の離脱を防ぎ、CVRの改善に期待できます。
利用者にとってのメリット
好きなタイミングで問い合わせできる
サポート受付時間外のために問い合わせできず、「不便だな~」と感じた経験は誰もがお持ちでしょう。
ネットで商品を購入しようとするとき、利用時間は圧倒的に夜間や休日が多いといわれています。
もし、チャットボットのおかげで24時間365日いつでも問い合わせに回答が得られるのであれば、そのWebサイトは訪問者の問い合わせニーズに応えられる便利なサイトといえるでしょう。
知りたい情報にすぐにたどり着ける
FAQページやマニュアルを閲覧していても、知りたい情報に中々たどりつけず、結局電話やメールで問い合わせてしまうこともあるでしょう。
チャットボットは、オペレーターに質問するのと同じような会話感覚で、目的の情報までユーザーをナビゲーションすることが可能です。
また、FAQページなどにわざわざ遷移する必要もないので、情報への到達スピードも圧倒的に早いといえます。
慣れ親しんだチャネルで問い合わせできる
近年、LINEなどのメッセンジャー形式のコミュニケーションが普及しており、ユーザーの多くはチャネルに慣れ親しんでいるでしょう。
電話で直接話すことやメールを書くことを面倒だと感じるユーザーもいるため、チャットボットのように慣れ親しんだメッセンジャー形式で問い合わせできることは利用者のメリットです。
また、メールや電話と異なり、個人情報を提示する必要もないので、匿名で気軽に問い合わせできることもチャットボットが提供できる価値といえます。
チャットボットの種類(AI?AIじゃない?)
「チャットボット=AI」とイメージされる方もいるかもしれませんが、必ずしもAIが活用されているとは限りません。
AIを搭載していなければ使えないという話ではなく、それぞれメリットとデメリットがあるため、チャットボットの利用用途に応じて選択することが重要です。
AI(人工知能)型チャットボット
チャットボットにAI(人工知能)を搭載しており、データの蓄積によって学習が進むことで、精度の高いコミュニケーションができるタイプです。
自然言語処理と呼ばれる「言葉をコンピューターに処理させる」部分にAIの技術が用いられています。
言葉の表現は、同じことを指している場合でも人によって異なります。
そのため、AIを用いて正しく言葉の意味を理解することで、正しい回答を提示することが可能になります。
非AI型チャットボットと比べて費用が高く、学習期間を要することが一般的ですが、高い回答精度のおかげで幅広い内容に対応することができます。
非AI(人工無能)型チャットボット
AIを搭載しておらず、決められたルールに従ってのみコミュニケーションを行うチャットボットです。
人工知能がないため、「人工”無”能」や、ルール通りに動くので「ルールベース(シナリオ)型」と呼ばれることもあります。
設定済みの内容であれば問題なく回答できるため、ユーザー側からはAIを搭載しているかは分かりません。
また、言葉の表現に対応するため、類義語を登録することで疑似AIのような言語処理をすることも可能です。
AI型チャットボットと比べると費用が安く、設定さえ済めばすぐに使い始めることができるため、問い合わせ内容が限られている場合などに活躍するでしょう。
【21年度版】国内の最新導入事例
実際にチャットボットを導入している国内企業の最新事例をご紹介します。
LOHACOのマナミさん(アスクル株式会社)
アスクル株式会社が、ヤフー株式会社の協力により運営する個人向け通販サイト「LOHACO」。
そのお客様サポート窓口として、2014年にチャットボットの「マナミさん」が導入されました。
名称は、当初「ロハコさん」という案がでていたそうですが、様々なケースを考えた結果、当時の担当者の名前“まなみ”をつけたそうです。
問い合わせ対応の効率化を目的に導入したマナミさんは、なんと月間で6.5人分もの働きをしてくれるため、スタッフはヒトにしかできない業務に注力できるようになったと大きな成果をあげています。
2016年にはLINE版もリリースされ、法人サービス「アスクル」にも「アオイくん」というチャットボットを導入するなど活用が進んでいます。
ローソンクルー♪あきこちゃん(株式会社ローソン)
2016年よりLINE上でユーザーとコミュニケーションをとるツールとしてチャットボット「ローソンクルー♪あきこちゃん」を展開しています。
あきこちゃんは、2019年には日々10万人もの訪問者を集めており、通常の会話以外にゲームや占いができることも特徴です。
もちろん売上にも貢献しており、あきこちゃんが配信するクーポンの利用率は桁違いとのこと。
飽きさせない工夫がユーザーの満足度を高め、結果的に売上アップを実現している成功事例といえます。
- ローソンクルー♪あきこちゃん|ローソン研究所
- ローソンが「あきこちゃん」に期待するワケ (1/2) - ITmedia ビジネスオンライン
- ローソンのチャットボットは日々10万人が利用 炎上を防ぐ舞台裏:日経クロストレンド
イーオのごみ分別案内(横浜市資源循環局)
横浜市資源循環局が、ごみの出し方の分かりやすい案内の可能性をさぐるために導入されたチャットボット。
ヨコハマ3R夢(スリム)!のマスコットである「イーオ」がごみの分別方法を案内してくれます。
回答精度が高いことも特徴ですが、このチャットボットが有名になったのはあるユーザーの投稿でした。
ゴミではなく「旦那」と入力すると、思いもよらない回答が返ってきたことがきっかけにSNSで話題になったためです。
詳しく知りたい方は、ぜひ下記のリンク先をご覧ください。
「旦那捨てたい」に神回答 横浜市のごみ分別AIがまるで人生相談 - withnews(ウィズニュース)
社内問い合わせ対応チャットボット(サッポロホールディングス株式会社)
サッポロホールディングス株式会社は、社内問い合わせの増加による業務量削減を課題に感じ、チャットボットを導入しました。
結果、間接部門の社内問い合わせ対応業務を45%削減という成果をあげています。
また、1件の問い合わせを解決するための所要時間を4分近くから30秒に縮めたという効果もでており、チャットボットを上手く活用している成功事例といえるでしょう。
今後は、グループ各社にも展開していく考えで、ますますのチャットボット活用が見込まれます。
チャット検索サービス(株式会社ミュゼプラチナム)
株式会社ミュゼプラチナムは、離脱率も改善に課題を感じており、お客様との接点を増やしたいと考えチャットボットを導入しました。
結果、チャット利用者の遷移率が飛躍的に高まり、CVRも導入前と比較して1.5倍に改善しました。
また、チャットボットの導入によってコールセンターへの問い合わせ数も削減され、CVR改善と同時に工数削減も実現しています。
マクロミルモニタサポート(株式会社マクロミル)
株式会社マクロミルは、「利用者が自身で解決できる問い合わせを、わざわざ連絡いただくことなく解決できないか」と考えていました。
FAQページを作成しているものの見てもらえないという課題もあり、自己解決を促して業務を効率化する目的でチャットボットを導入しました。
結果、昨年の同時期と比べて問い合わせ総数を20%削減という成果をあげています。
また、チャットボット上だけでよく閲覧されている項目があることも分かり、問い合わせするまでもい小さな疑問の自己解決にも役立っていることが分かりました。
フリマアプリ「メルカリ」(株式会社メルカリ)
株式会社メルカリは、「出品や購入に関する問い合わせを迅速に解決したい」「有人対応は時間的な限界があるので、24時間何かしら回答できる体制を備えたい」という課題を解決するためにチャットボットを導入しました。
結果、問い合わせを24時間受け付け可能な体制を実現し、利用者の声の変化を察知して先手のサポート提供が可能になりました。
チャットボットは魔法のツールではない
もちろんチャットボットとはいえ、導入したからといって必ずうまくいくわけではありません。
中には、導入したものの利用されたのは最初だけで、次第に誰も使わなくなってしまった…というケースもあります。
では、一体どのようなときにチャットボット導入が失敗を招くのかでしょうか。
何でも回答してくれると期待しすぎた
チャットボットを導入すればどんな問い合わせにも回答してくれると過度な期待をしてしまったケースです。
もちろん学習を積み重ねていくことで、昨日まで答えられなかった問い合わせに対応できるようにもなりますが、チャットボットといえど限界があります。
イメージとしては、FAQページやマニュアルに掲載されているような「よくある問い合わせ」がチャットボットの得意領域であり、詳細なヒアリングが必要な問い合わせにはあまり向いていません。
自社の業務において、どのような業務を、どこまでチャットボットに委譲できるのかをきちんと考えないで導入してしまうと、このようなミスマッチが生じる可能性が高いです。
そのため、「AI」や「チャットボット」という先進的な言葉のイメージに惑わされず、現状と照らし合わせたうえでの導入を検討すべきといえます。
1度の設定だけで放置してしまった
チャットボットを導入し、きちんと設定までやり遂げたものの、その後放置してしまったケースです。
利用者からの質問を想定してチャットボットの設定をしたとはいえ、想定外の質問がくるのは当然といえるでしょう。
本来であれば、利用データを分析して(ツールによってはレポート機能が充実しており、分析が簡単なものもあります)、チャットボットの設定を見直すことで、利用者にとってますます有益なものになります。
しかし、調整を怠ってしまうと、利用者が回答を得られない経験が積み重なり、「チャットボットに質問しても回答が得られないから、今後は使わない。」という選択をしてしまう可能性があります。
一度利用を止めたものを再度使い始めることは難しいため、特に導入の初期段階は小まめに調整することがチャットボット運用を成功させるカギといえます。
そもそも必要がないのに深く考えずに導入していた
流行っているから、という理由で深く考えずにチャットボットを導入してしまったケースです。
上記でみてきたようにチャットボットには様々なメリットがありますが、どのような場面でも活躍できるわけではありません。
ユーザーの属性や設置場所の影響を考慮せずに、なんとなく導入してしまうと、効果が出ずにそもそも必要なかったという結果になってしまいます。
また、競合他社が導入したからという理由で検討を始める際も、一度きちんと自社のケースに当てはめて考えるべきです。
効果が出なければやめればいいという考えもありますが、導入にあたり少なくとも一定の資金とリソースを投下することになるので、「自社でチャットボットがどのような効果をあげることができるのか?」のイメージを具体化することが重要といえます。
今後の将来性に期待大!
『チャットボットってうちでも使えるかな?』
ここまでお読みになられて、上記の質問に答えられるようになったでしょうか。
市場の成長性から見ても、チャットボットには大きな将来性があります。
チャットボットが存在する意味は、単に業務効率化や利便性の向上だけでなく、顧客接点を拡大することで、接客品質の底上げや既存マーケットの掘り起こしにも役立つことです。
まさにこれからの時代にマッチした、新しいカスタマーエクスペリエンスを提供できる企業へと成長するカギと言っても過言ではないでしょう。
また、チャットボットを導入する企業も、今後加速度的に増えていきます。
もし、『うちでは●●部門で使えそう!』などのイメージが湧いたのであれば、一度チャットボットについて相談してみてはいかがでしょうか?
この記事をきっかけに、貴社が次のチャットボット成功事例になる第一歩を踏み出すことを願っております。
チャットボットのQ&A
- チャットボットをわかりやすく説明すると?
- チャットボットのどのようなシーンで利用されていますか?
- チャットボットはAIなのでしょうか?
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この記事を書いた人
川口 雄治
法人向けクラウドサービスを提供する株式会社ラクスで、製品プロモーション・営業支援を担当。前職は無印良品の店長という少々変わった経歴。