人工知能型チャットボットの仕組みやメリットは?気になる活用方法まで解説!

スマホを持つ男性とキーボードを打つ人の写真

チャットボットとは、対話を意味する「チャット」とロボットの略語である「ボット」という2つの単語を組み合わせた言葉で、ユーザーが入力・選択した言葉に対して、自動的に返信するシステムのことを指します。

チャットボットは、カスタマーサポートや社内ヘルプデスクなどで発生する対応業務の、効率化や品質向上に寄与するとして、近年大きな注目を集めています。

この記事では、チャットボットの中でも人工知能(AI)を搭載するタイプに着目し、その仕組みから活用方法にいたるまで詳しくご紹介します。

この記事の目次

    なぜ、「チャットボット」が注目されている?

    BOTの文字が立体的になったイラスト

    チャットボットが注目される背景には、どういったものがあるのでしょうか。
    ここでは、考えられる背景を3つご紹介します。

    市場競争の激化

    近年、技術の発展などが要因で商材の差別化が難しくなっています。

    企業は顧客が他社に流れないよう、他社よりも魅力的な商品・サービスを売り出し、優れた顧客対応を行うことが求められています。また、現在は各企業に効率的な業績向上の施策を実施し、商品やサービスの品質以外で、付加価値を提供することも必要とされているのです。

    チャットボットを設置することには、顧客側のメリットも多く、付加価値となるでしょう。また、他社に先駆けてチャットボットを導入すると、差別化も図りやすい点から、注目されているのです。

    チャットコミュニケーションの浸透

    2010年代、スマートフォンが急速に普及したことにより、LINEのようなチャットツールが活発に利用されるようになりました。

    近年のユーザーは、LINEをはじめとしたチャット形式での手軽で迅速なコミュニケーションに慣れていることもあり、チャットはボット従来の問い合わせよりも気軽に質問しやすい特徴を持っています。ユーザーが「面倒だ」と感じることなく、問い合わせへのハードルを低くすることができるのです。

    人工知能の発達

    近年はAIの急激な発達し、それとともに非常に私たちの生活に近いものになってきました。AIの発達の背景には、ビッグデータと深層学習(ディープ・ラーニング)と発展が大きく関連しています。AIの概念は1950年代ごろに誕生し、1966年には「ELIZA(イライザ)」という英語で入力したテキストに簡単な返答をする自然言語処理プログラムが生まれましたが、さまざまな問題から実用化には至りませんでした。

    しかし、ビッグデータや深層学習が発展することによってたくさんの情報を抽出して、そのデータをAIに大量に読み込ませることによって、精度を上げることに成功。マイクロソフトのOffice97には、イルカのアニメーションが印象深い「Officeアシスタント」というヘルプ機能が搭載され、ユーザーが入力した文字列に対してヘルプ情報の検索・参照ができるようになりました。

    そして2011年になると、iPhone 4sに搭載された「Siri」というチャットボットが大きな話題に。Siriは、「Hey Siri」と声をかけるだけで起動でき、音声による質問に対応可能な画期的なアシスタント機能です。2016年にはマイクロソフトやGoogle、Facebook、LINEなどの企業が続々とチャットボットサービスを発表し、チャットボットに大きな関心が寄せられるようになりました。

    チャットボットの種類

    ディスプレイからチャットボットが飛び出しているイラスト

    先ほど、人工知能(AI)の発達もチャットボットが注目される理由だとご紹介しましたが、すべてのチャットボットに必ずしも人工知能が搭載されているわけではありません。

    実はチャットボットには大きく分けて人工知能を搭載しない「ルールベース型」と、AIを搭載した「人工知能型」という2つの種類があります。

    両者では特性や得意とする分野が大きく異なるため、違いを理解しておくことが重要。それぞれ以下に解説しますので、ぜひご参考下さい。

    ルールベース型のチャットボット

    ルールベース型チャットボットとは、名称の通り一定のルールに従って対応を行うチャットボットです。

    高度な対応には不向きですが、意図した通りに動作させやすいため、ある程度回答パターンが決まった定型的な対応に適しています。

    あらかじめ登録したシナリオ・データ以外の回答を行うことができないため、入力される質問を予測してシナリオ・データの作成を行うことがポイントとなります。

    ルールベース型チャットボットはシンプルな仕組みであるため、時間・コストをかけずに導入・運用を行いたい場合にはおすすめです。

    人工知能型のチャットボット

    AI型(人工知能型)のチャットボットは、機械学習により登録された膨大なデータから、統計的に最も適切であると思われる回答を導き出すチャットボットです。回答の精度が高く、人間の会話に近い対応を行ったりある程度の表現のゆらぎを吸収したりするなど、知的で高度な対応を行えることが特徴です。

    しかし、十分な回答精度を発揮するためには、事前に膨大な学習を行うだけでなく、運用データをもとに誤った回答のデータ見直しや再学習を行うことが必要となります。

    一般的にAI型のチャットボットはルールベース型チャットボットの上位互換と位置付けられており、機能・性能に優れている反面、導入・運用のコストは高くなる傾向にあります。

    人工知能型チャットボットの仕組み

    人工知能型チャットボットの仕組みについて、もう少し詳しく見ていきましょう。

    人工知能型チャットボットは、ユーザーと会話を繰り返すことで回答精度を高めますが、運用開始時に、まずは初期の学習データが必要となります。初期の学習データを取り込んだうえで、会話を繰り返すことでデータを蓄積、徐々に精度が高まっていくという仕組みです。

    また、「人工知能型は自動で学習してくれるため、手を加える必要がない」という認識は誤りです。学習したデータの内容に不備があると、回答精度の悪化につながる恐れがあるため、定期的にデータをチューニングする必要があります。

    チューニングというと、「難しいのではないか」「手間がかかるのではないか」と不安を感じる方も多いかと思います。しかし、近年リリースされているAIチャットボットツールでは、こういったチューニング作業も手間なく簡単に行えるようになっているようです。

    次章では、人工知能型チャットボットならではのメリットをご紹介します。

    人工知能型チャットボットのメリット

    ディスプレイの両サイドに小さな人が立っているイラスト

    人工知能型チャットボットには、どのようなメリットがあるでしょうか。ルールベース型にはない、人工知能型ならではのメリットはたくさんあります。

    ここでは、人工知能型チャットボットのメリットについてご紹介します。

    自然な会話

    AIチャットボットの最大のメリットは、何といっても自然な会話が実現されることでしょう。

    シナリオ型のチャットボットは、「Aという質問をされたら、Bと返答する」のように、あらかじめ設定されたシナリオの範囲でしか回答ができません。そのため、会話にぎこちない部分も出てくるでしょう。

    対し、AIチャットボットは、膨大な学習データの中から、最も適切な回答を導き出すため、ユーザーはより人間に近い会話を楽しむことができます。

    また、AIチャットボットは”表現のゆれ”にも対応できるのも特徴です。例えば、「今日」と「本日」、「PC」と「パソコン」のように表現の仕方が異なる場合でも、同じ言葉として認識することができます。

    このように、AIチャットボットでは、人との会話と近いコミュニケーションを実現することができます。

    複雑な内容にも対応

    人工知能型チャットボットは、学習を繰り返すことで、ある程度複雑な内容にも対応できるようになります。

    シナリオ型は、登録してあるシナリオの内容を加えない限り、それ以上の回答をすることは難しいです。しかし、AIチャットボットは学習データの範囲であれば、ある程度複雑な内容にも対応ができるようになります。

    ただし、すべての内容に回答することは不可能です。無理に回答しようとするのではなく、電話番号やメールアドレスを表示したり、有人チャットに切り替えたりと、次のステップに促すと効果的でしょう。

    人工知能型チャットボットの活用方法

    5人の男女が話し合っているイラスト

    AI(人工知能)型チャットボットは、どのような場面で活用できるでしょうか。ここでは、3つの例をご紹介します。

    カスタマーサポート

    これまで、ユーザーから寄せられた質問は、スタッフが直接対応するしか方法がありませんでした。

    しかし、カスタマーサポート部門にチャットボットを導入することによって、一定の範囲の質問をチャットボットに任せられるようになり、業務効率化が期待できます。問い合わせ対応にかかっていた時間を削減することができれば、空いた時間を別業務に充てることもできるようになり、労働生産性の向上も期待できるでしょう。また、従業員の残業時間も減らすことができ、従業員満足度の改善や人材流出リスクの低減などにつながります。

    また、人工知能型チャットボットは、営業時間関係なく、24時間365日対応が実現されるため、機会損失の防止にもつながります。特にECサイトなどでは、休日や深夜に利用するユーザーが多く、問い合わせを受けても、次の営業時間まで回答ができないといったケースがよく見受けられました。

    そこで、AIチャットボットを導入することで、曜日や時間に関係なく、その場で回答をすることができるようになります。

    このように、AIチャットボットはカスタマーサポート業務に欠かせないツールになりつつあるといえるでしょう。

    社内ヘルプデスク

    チャットボットを導入して、社内ヘルプデスク部門に設置する方法も有効です。チャットボットによって自動応答が可能になり、従業員からの問い合わせ業務の一部を自動化できます。簡単な質問であればほぼ全て自動対応で済み、社内リソースの最適配置も進むでしょう。

    また、ユーザーとなる従業員にとっても、24時間自動で対応できるチャットボットがあれば、業務時間を考慮せずにいつでも質問ができます。従来の体制では、担当者による回答が得られるまでに待ち時間などが発生していましたが、チャットボットを導入することで即座に従業員の疑問を解決することが可能です。また、早朝や深夜帯など、勤務時間外に質問を行ったとしても、チャットボットがあれば対応することができるようになります。

    このように、ヘルプデスク担当者の側にも、従業員の側にも、双方にメリットがあるといえるでしょう。

    ナレッジ共有

    チャットボットにナレッジ情報を登録することで、従業員が会話軽視で簡単にナレッジを確認できるようになります。FAQのように自分で必要な情報を探し出すことなく、ボットが適切なナレッジ情報に誘導してくれます。チャットボットによるナレッジ共有の仕組みの活用を社内で定着させることができれば、結果として社内ヘルプデスクに対して、もしくは部署内や部署間の問い合わせや、やり取りを大きく削減できるようになり、企業全体の生産性を上げることができます。

    また、重要度が高く、優先して対処すべき業務に関する現場のリアルな声を蓄積できることから、分析にも活用できます。データから自社の弱点やこれから取り組むべき事業の方向性を見出し、企業全体に関わるより深い経営課題に取り組めるようになるでしょう。

    人工知能型チャットボットが解決できる課題

    人工知能型チャットボットは、そのパフォーマンスの高さから、さまざまな課題を解決することができます。

    ここでは、人工知能型チャットボットが解決できる課題について、FAQ型・エージェント型・キャラクター型という3つのタイプ別にご紹介します。

    FAQ型

    FAQ型チャットボットとは、フリーワードでユーザーからの問い合わせに対して適切な回答を行うことができるチャットボットです。FAQ型にはAI非搭載の辞書による回答を行うチャットボットもありますが、AI搭載型は学習データをもとに問い合わせ内容の解析を行い、より高度で高精度な回答を行えるのが特徴です。

    FAQ型チャットボットでは、主に次のような課題を解決することができます。

    • カスタマーサポートの問い合わせ対応を自動化・効率化
    • 社内ヘルプデスク業務の自動化・効率化
    • 時間外対応の実現
    • 対応品質・サポート品質の向上

    FAQ型チャットボットは24時間365日対応を行うことができるため、問い合わせ業務の自動化・効率化に最適。社内外の対応業務にかかるコストや負担を大幅に軽減することができます。

    また、有人対応との使い分け・併用も可能であるため、重要な問い合わせは必要に応じて有人対応へと切り替えることで、対応業務・サポート業務全体の品質向上にも繋がります。

    エージェント型

    エージェント型チャットボットとは、顧客との対話を通じておすすめの商品・サービスを提案したり、顧客の疑問を解決したりして、ビジネスの売上拡大をサポートするチャットボットです。AI搭載型チャットボットならではの、より人間に近い高度で知的な会話ができるという特性を活かして、自然な会話を通じてユーザーを誘導できることが特徴です。

    エージェント型チャットボットは、次のような課題解決に適しています。

    • ECサイト・Webサービスの販売促進
    • Web接客の強化
    • 顧客体験の向上

    エージェント型チャットボットは、会話から得たユーザーのニーズ・ウォンツ・趣味・嗜好といったさまざまな内容を理解しながら会話を進めることができるため、売り込みを感じさせないことがポイント。ユーザーに嫌悪感を抱かれることなく満足度の高い購買活動をサポートします。

    キャラクター型

    キャラクター型のチャットボットは、問い合わせ対応や接客ではなく、ユーザーとの会話を楽しむこと自体を目的としたチャットボットです。ブランドキャラクター・マスコットキャラクター・イメージキャラクター等をチャットボットに取り込むことで、独自の世界観やエンタメ性を演出することができます。

    キャラクター型チャットボットでは、以下のような課題を解決することが可能です。

    • 企業・行政等の新しいプロモーション
    • 顧客エンゲージメント向上施策
    • イメージアップのためのパフォーマンス

    AI搭載型チャットボットならではの自由な会話を提供できるのに加え、近年ではキャラクターの口調を再現できるなど技術も向上しており、さまざまな演出が可能となっています。

    人工知能型チャットボットの選び方

    人工知能型チャットボットは数多くの製品がリリースされているため、自社に最適な製品をどのように選べばよいか分からない方もいるのではないでしょうか。

    ここでは、人工知能型チャットボットの具体的な選定方法とチェックすべきポイントについてご紹介します。

    チャットボットの種類選び

    AIチャットボットといっても非常に多くの製品があるため、まずは大枠としてどの種類のチャットボットを選ぶのかを決めることが重要です。自社の目的・用途から、先にご紹介したFAQ型・エージェント型・キャラクター型からどのタイプのチャットボットを選ぶのかを決定します。タイプを先に決定すれば選択肢を大幅に絞りこむことができるため、ツール選びをスムーズに進めることができます。

    学習やチューニングにかかる手間

    AI搭載型のチャットボットは、高機能・高性能である反面、データの学習やチューニングには時間と労力を要します。製品にもよりますが、導入時には1~3ヶ月程度の期間が必要となり、リリース後も定期的にメンテナンスを行って回答精度を向上させていく必要があります。

    そのため、AI搭載型チャットボットを選ぶ際には、自社がチャットボットの学習・チューニングに避ける時間・労力を考慮したうえで製品を選ぶことも重要となります。

    いくら優れたAI搭載型チャットボットでも、学習・チューニングが疎かになってはパフォーマンスを発揮できないため、製品選びの際には必ず確認しておきましょう。

    導入事例を確認

    AI搭載型チャットボットが優れたツールであることは間違いありませんが、高機能・多機能であるが故に使いこなすことが難しく、導入に失敗してしまう事例が後を絶ちません。

    そのため、AI搭載型チャットボットを選ぶ際には、ベンダーが提供する製品概要だけでなく導入事例の確認を行い、具体的にどのようなシーンでどのように活用されているのかを理解しておくことが重要となります。

    複数の事例を参照することで、製品が自社に適しているのかという判断の可否や、具体的な運用イメージも掴みやすいため、製品の選定・導入の成功確度を高めることができます。

    実際の事例から学べることは非常に多いため、ぜひ実施しておきましょう。

    ベンダーのサポート体制

    AI搭載型チャットボットでパフォーマンスを発揮するには、導入時だけでなく導入後もユーザーの利用状況や回答率といったデータを把握して、繰り返しチューニング・メンテナンス・カスタマイズを行う必要があります。

    AI搭載型の設定には専門的な知識・スキルを要する部分が多く、トラブルや不具合が発生する場合もあるため、ベンダーのサポートを上手く利用することが重要となってきます。

    AI非搭載型のチャットボットであれば内製できる場合もありますが、AI搭載型はベンダーのサポート次第で導入の成否や運用安定化までの期間が左右されることも少なくありません。

    そのため、製品を選ぶ際にはベンダーのサポート範囲・サポート体制・サポート品質について必ず確認を行い、できるだけきめ細やかなで充実したサポートを提供している製品を選ぶようにしましょう。

    まとめ

    この記事では、人工知能型チャットボットについてその仕組みやメリット、活用方法についてご紹介しました。
    近年、IT化が進んだことでさまざまなツールが使われるようになっています。

    しかし、その一方でチャネルが多岐にわたるようになり、得られる情報量も非常に増えました。そのため、色々なデータを使って運用するプロセスを自動化したり、効率化したりすることの重要性も高まっています。

    今回ご紹介したチャットボットツールでは社内外におよぶ質問対応を自動化していくことが可能です。
    ぜひ、カスタマーサポートや社内ヘルプデスクの対応業務の改善に、チャットボットを活用してみてください。

    • 執筆者:ボットマガジン編集部
    • この記事を書いた人

      ボットマガジン編集部

      ボットマガジン編集部です!チャットボットについて、タイムリーでお役立ちな情報をお届けします。

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