RPAとAI、それぞれの特徴・違いとは?組み合わせた活用事例も紹介

RPAとAI、それぞれの特徴・違いとは?組み合わせた活用事例も紹介

「定型業務が多く、重要な仕事を圧迫している」とお困りではないでしょうか?

パソコンで何度も同じように繰り返して行うような単純業務は、RPAを導入すると自動化が可能です。さらにAIも活用すれば、より高度な業務を効率よく行えるようになります。RPAやAIを導入するなら、まずはそれぞれの特徴や違いを把握して、自社に適したものを選ぶことが大切です。

そこで今回は、RPAとAIの特徴と両者の違いを解説します。組み合わせて活用している事例も紹介しますので、導入を検討する際のご参考にしてください。

この記事の目次

    RPAとは?

    RPAとは

    RPAとは、Robotic Process Automationを略した言葉で、日本語では「ロボットにより(Robotic)」「処理・行程を(Process)」「自動化すること(Automation)」を意味します。

    ビジネスにおいては、主にバックオフィスで、人間が行っている業務を代わりにこなしてくれるツールを指すのが一般的です。

    RPAにできること

    RPAは、人間が手動で行っている定型業務や繰り返して行うルーティンワークを、あらかじめ指定したルールにのっとり、主にパソコン上で実行します。

    <RPAの活用例>

    1. 交通費の精算
    2. 伝票や請求書データの入力
    3. 問い合わせ内容の転記
    4. 在庫状況の確認

    RPAは上記のような、人間がこなすと時間と手間がかかる処理を自動化できるので、人材不足の解決手段、そして業務効率化の打ち手として期待されています。

    AIとは?

    AIとは

    AIは、Artificial Intelligenceを略した言葉で、日本語では「人工知能」と訳されます。人間と同じような知能を持ち、自ら学習できるソフトウェアを指すのが一般的です。

    AIにできること

    AIは、与えられた膨大なデータから自ら法則を見つけだし、判断できるようになることが特徴です。AIは単独で活用されるのではなく、さまざまな機械やシステムに組み込むこまれることにより、司令塔としての役割を担うケースがほとんどです。

    <AIの活用例>

    1. チャットボット
    2. 人材採用時の書類選考
    3. 物流の需要予測システム
    4. 医療分野の診断補助

    上記のようにAIは、人間同様知能を持ち、物事を判断する業務を得意とします。そのためAIそのものがなにか作業をすることはありません。

    RPAとAIの明確な違い

    RPAとAIの明確な違い

    RPAとAIは混同されやすいのが特徴ですが、両者には明確な違いがあります。

    RPAは、人間が定めたルールに従って動くのが特徴です。たとえば顧客から見積書の発行依頼が届いたら、あらかじめ設定されたスプレッドシートから型番や発注数を拾い、システムで検索・照合します。そして表示された価格や在庫状況をもとに、指定のフォーマットで見積書を作成するまでを自動的に行います。

    このような動作をさせるためには、人間があらかじめRPAに作業内容やルールを記憶させておかなければなりません。一度タスクを設定すると、人間の代わりに正確かつスピーディーにルーティンワークを行えるのがRPAの特徴です。

    一方AIは、RPAのように自ら作業を行うことはありません。たとえば先ほどの見積書の発行業務であれば、顧客から見積依頼が届いたときに、RPAに指示出しするのは人間の仕事です。一方AIは、顧客から届いたメールの内容を読み込み、「見積書の発行が必要」と自分で判断し、RPAに指示を出して実行します。

    つまり、RPAを動作させる人間の役割を担うのがAIなのです。人間でいえば、AIが脳であり、脳からの指示を受けて動く手脚がRPAだと考えると良いでしょう。

    RPAやAIが注目されている背景

    RPAやAIがこれほど注目されているのには、2つの理由があります。

    少子高齢化による人材不足

    日本は2008年に人口のピークを迎え、以降人口減少が続き、深刻な少子高齢化社会へと突入しています。2020年の出生率は1.34人にまで落ち込み、今後増える見通しは今のところなく、減少が続いていくと予測されています。

    【出典】厚生労働省「令和2年(2020)人口動態統計月報年計(概数)の概況

    出生率が下がれば、当然ながら労働人口も減少していくことになります。そんな労働人口の不足を補うための手段として、これまで人間が行ってきた事務作業を、RPAに代替させることを検討する企業が増えてきているのです。

    RPAツールの発展

    RPAやAIが進化し、機能が向上して多くの業務やシーンで活用できるようになったことも、RPAが注目されている理由です。

    ひと昔まえは、RPAを導入しようと思っても、機能させるまでに多大な労力がかかったり、思ったような動作をしなかったりといった問題がありました。しかしAIと組み合わせて使用することで能力が大幅に向上し、多くの場面で導入できるようになりました。

    また近年は、クラウドサービスも充実し、手軽に導入できるようになったこともRPAの普及に一役買っています。現在はまだ大企業での導入が中心ですが、今後もっと手軽に、そして安価に利用できるようになれば、中小企業での活用もどんどん増えていくと考えられます。

    RPAとAIは組み合わせてさらに便利になる

    RPAとAIは組み合わせてさらに便利になる

    RPAとAIを組み合わせると、さらに便利に使えるようになることから、人材不足の解消に大きく貢献すると考えられています。

    RPAは、大きく分けて以下の3つのクラスに分類されます。

    クラス1 RPA
    (Robotic Process Automation)
    従来のRPA。人間の指示のもと、定型業務を自動的に行う。
    クラス2 EPA
    (Enhanced Process Automation)
    AIと連携してデータを解析することで、ある程度の非定型業務の自動化が可能。
    クラス3 CA
    (Cognitive Automation)
    クラス2よりさらに高度なAIと連携し、ロボット自身が判断してほとんどの業務プロセスを自動化。

    このように、RPAはAIと組み合わせること、さらにそのAIがより高度になることで、より複雑な業務をこなせるようになるため活用の幅が大きく広がります。

    現在多くの企業で採用されているのはクラス1のRPAですが、今後はAIと組み合わされたクラス2、クラス3の導入が進むと考えられます。そうすれば、商品の売り上げ予測など、現在は人間しかできないような仕事についても、RPAがより精度高く、スピーディーに実行できるようになるでしょう。

    AI搭載RPAの活用事例

    AI搭載RPAの活用事例

    ここからは、AIを搭載したRPAの活用事例を3つご紹介します。

    銀行での事例

    まずは、ある銀行での導入事例をご紹介します。

    <導入の背景>

    銀行では、公共料金の口座振替をはじめとして多くの業務を行います。そのため業務に関する顧客関連の書類の量が膨大になり、社内業務を効率化する必要に迫られていました。

    また、書類ごとに書式が異なり、必要な情報がどこに書かれているのかを判断するのが難しい状況に陥っているのも問題でした。書類は顧客によって手書きで記入されることから表記揺れも多く、機械で自動化するのは難しいと考えられていたのです。

    <活用方法>

    この銀行では、RPAを導入することで、手書きの口座振替依頼書を読み取り、自動で入力処理できるようにしました。口座振替依頼書は非定型であるため、読み取りや入力を自動化するのは難しいと考えられていましたが、RPAとAIを組み合わせたシステムを開発することで自動化を可能にしたのです。

    スキャンした書類の画像をAIに読み取らせて、必要な情報がどこに書かれているかを判断させることにより、従来は難しいとされていた機械化を実現できました。

    <導入効果>

    AIを組み合わせた口座振替依頼書の読み取りシステムを導入したことで、8割ほどの業務削減に成功。事務作業の効率化につながりました。

    【出典】NTT東日本「RPAとAIの違いとは?業務効率化のためのRPA活用事例4選」

    賃貸不動産仲介業での事例

    続いて、賃貸不動産仲介業でのRPA導入事例をご紹介します。

    <導入の背景>

    賃貸不動産仲介業では、共通のデータベースから物件情報を調べ、自社の名前で物件検索サイトに登録するルーティンワークがあります。他社に先駆けて検索サイトに登録することが収益につながると考えられるため、少しでも早く登録作業を行う必要があるのです。

    そのため、繁忙期には一時的に大量の登録業務をこなすためのアルバイトを採用するなど、多くの労働力を必要とするのが課題でした。

    <活用方法>

    物件サイトに登録する業務を自動で行うために、RPAを導入しました。RPAは、一定の条件をもとに、Webページを巡回したり、データを入力したりといった定型業務が得意です。その特性を活かし、不動産仲介向け物件公開サイトから、必要なデータを自動で抜き出して物件情報を入力し、いち早く情報を公開できるようにしたのです。

    さらに「どの物件情報を抜き出して検索サイトに登録するか」までRPAが判断できるよう、AIを開発しました。RPAが取得した物件情報のなかから、短期で成約に結びつく物件かどうかをAIが判断し、それに基づき登録の優先順位を決めさせたのです。そうすることで、成約しやすい物件から優先して登録できるようになりました。

    <導入効果>

    限られた広告費をより効果的に使い、収益を向上させることが可能になりました。

    【出典】RPA TECHNOLOGIES「RPA TECHNOLOGIES「RPAとAIを組み合わせて業務効率化と高度化を実現:賃貸不動産仲介業における事例

    行政における事例

    最後に、行政がRPAを導入し、業務効率化の検証実験を行った事例を紹介します。

    <導入の背景>

    足立区では、総務省が実施している「業務改革モデルプロジェクト」を受託し、AI-OCRとRPAを活用した業務自動化の検証実験を行いました。

    この検証は、申請が一時的に集中することで、短期間での入力処理が必要な業務にAI-OCR(手書きや印刷された紙データをスキャナなどで読み取りデジタルデータ化するツール)とRPAを導入する可能性を探るのが目的です。これまで職員が行ってきた業務を自動化できれば、区民サービスの向上などより必要な課題に注力できるようになることが期待されます。

    <活用方法>

    処理件数や処理時間が多く、自動化により効果が期待できる、住民異動手当のデータ入力や公的年金等支払報告のデータ加工・入力業務など10業務を選定。従来は職員が受理した書類の確認、システム登録、登録内容の確認までを人力で行っていました。検証実験では、受理した書類を職員が確認後スキャンし、AI-OCRが読み取った結果を再度確認・修正を行い、RPAがシステム登録までを実行します。

    <検証結果>

    検証対象とした10業務のうち、4業務では業務時間や窓口対応時間の削減効果は見込めないとの結果が出た一方、6業務で合計1,436時間の削減が見込めました。削減が見込まれる6業務における費用対効果は、年間約415万円と試算されています。

    【出典】足立区「AI-OCR、RPAを活用した業務自動化の検証を行いました(総務省「業務改革モデルプロジェクト」受託事業)

    まとめ

    RPAとAIは特徴が異なり、両者を組み合わせることでより高度な業務をこなせるようになります。現在もっとも活用されているのは、人の指示に基づきデータ入力や伝票処理といった、単純な定型業務を機械的にこなす簡易なRPAです。しかし今後はAIが搭載され、人の指示なく自分で判断して処理を進められるより高度なRPAが活用されるようになると考えられます。

    そうなれば、少子高齢化に起因する人手不足の解消につながり、人間はより高度な判断が必要とされる業務に取り組めるようになるでしょう。

    • 執筆者:ボットマガジン編集部
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